2021年医療福祉建築賞
横浜市立市民病院
所在地 | 神奈川県横浜市神奈川区三ツ沢西町1-1 |
延床面積 | 79,612 ㎡ |
竣工年月 | 2020年3月 |
開設者 | 横浜市 |
管理者 | 横浜市 |
設計者 | ㈱佐藤総合計画 |
施工者 | 戸田・松尾・馬淵建設共同企業体<診療棟> 松尾・奈良建設共同企業体<管理棟> |
写真撮影 | はなファクトリー 津布久智 |
【選評】
困難な敷地条件を柔軟に「受け容れて」,1フロア3看護単位の病棟階と水平距離約150 mの低層階を持つ,フルスペックの急性期病院を実現している.動線短縮,動線交差回避「原理主義」では実現しない計画を,敷地選定時から深い洞察を重ねてきた医療者の理解と,きめ細かくそれに応えた設計者,さらに開院後の運営者の創意工夫により見事な医療サービスを提供している.
旧病院で横浜港からの新興感染症患者受入れ訓練を重ねていた.期せずして発生した新型コロナ感染症,移転直前の2020 年2月にクルーズ船の患者を受け入れ,5月の開院直後もスムーズに移行できた.患者や医療者のストレスを熟知した対応で,感染症病床の最上階配置,単独の動線計画・運用は,今後の感染症対応の標準となろう.また,長い平面計画については簡潔明快な配置計画とデジタルサイネージを駆使したサイン計画により利用者に優しい病院を実現している.あえて患者動線の一部を公園側に変更し,三ツ沢公園や富士山を遠望できる場所を確保した.そのことにより職員エリアと隣接し,職員の「適度な」緊張感を生み出せたことは,運用を熟知した医療者の慧眼と言える.
毎年の職員アンケートで「一番大切な人に受診や入職を勧められるか?」を指標として変革を継続している姿は,黒字経営を続けていることも合わせて,市立病院の一つの理想形を示している.