2008年医療福祉建築賞
特別養護老人ホーム あさひ苑
| 所在地 | 愛媛県宇和島市三浦西4979 |
| 定員 | 特別養護老人ホーム50名，老人短期入所施設20名 |
| 延床面積 | 3,656㎡ |
| 竣工年月 | 2006年11月 |
| 開設者 | 社会福祉法人 愛心会 |
| 管理者 | 介護老人福祉施設 あさひ苑 |
| 設計者 | ㈱コスモス設計 |
| 施工者 | 前田建設工業㈱ |
【選評】
山に囲まれ平地の乏しい土地だが，平屋建てにこだわった施設は，建築家と造園家との共同設計で，当初から自然と建築との一体を目指した．ユニットを平行に配置したのびやかな建物は全ての空間が庭に面し，種々の植物で四季の流れが感じられ，果実が実れば食卓に上る．地元の石積みのアースカラー，屋上緑化は周囲との一体化を意図した．
全個室・小規模ユニット型であるが，ありがちな囲み型のユニットではなく，雁行させた廊下が居室をゆるやかにつないでゆくデザインの完成度は高い．北側に居室，南側に廊下の配置は，夏の暑さから居室を守り，冬には暖かい日だまり廊下となり，つい出て過ごしたくなる空間となっている．中庭を挟んでの対面はなだらかな斜面に目線が少し外され，また外部の植栽がゆるやかに視線を遮る．
中央の廊下はゆるやかなスロープで，内部でありながら半屋外の雰囲気を漂わせ，ユニット内とのメリハリが明快である．この廊下沿いに各ユニットの玄関，エントランスホールやラウンジ，談話コーナーなどが点々と配され，多様な居場所のあるパブリック性の高い空間となっている．
動線が長く死角も多いかもしれないが，それ以上にどこからでも見える庭で生活が強く支えられる自然そのものの介護力を生かそうとする意図は有効に機能しているようだ．