2008年医療福祉建築賞

うむやすみゃあす・ん 診療所

所在地 沖縄県宮古島市平良字下里1477-4
延床面積 713㎡
竣工年月 2006年7月
開設者 医療法人 たぶの木
管理者 医療法人 たぶの木
設計者 後藤哲夫建築事務所
施工者 先嶋建設㈱
写真撮影 淺川敏
【選評】

 宮古島の豊かな自然や人々の中で「心が触れ合い和む医療」をめざして,大学病院の脳神経外科医局から離島への移住を即決した夫婦が,建築家や島の人たちと協同で作りあげた診療所である.
 「うむやす」は宮古方言で「安心,安全」,「みゃあす」は「心がすっきり,気持ちが楽になる」などの意味を表し,いつでも安心してかかれ,心をすっきりして帰ることのできる診療所にしようとの「店主」の思いが込められている.宮古島では初めての脳神経疾患を診る専門診療所であり,昨年から,内科専門外来も増やし,島嶼地区の必須医療である「予防医療」にも重点を置いている.
 多くの医療福祉建築計画の現場では,経済が破綻した社会の流れに飲み込まれ,採算と効率ばかりが優先され,本来の「人を診る」医療施設計画が置き去りにされている.そのような逆風の中にありながらも,「ん」診療所では,シーサーが乗った赤瓦屋根が青い空に映え,深い軒の下には琉球ガラスを通した光の影が落ち,杉の間伐材を用いた内装が心地よく,島の人たちの心や体をいたわる寄り合い所として親しまれる施設計画と運営が実現されている.