2010年医療福祉建築賞
メディカルモリノビル
(聖マリアンナ医科大学附属研究所ブレスト&イメージング先端医療センター附属クリニック)
所在地 | 神奈川県川崎市麻生区万福寺6-7-2 |
延床面積 | 6,317㎡ |
竣工年月 | 2008年12月 |
開設者 | 中新産業(株)+学校法人聖マリアンナ医科大学 |
管理者 | 中新産業(株)+学校法人聖マリアンナ医科大学 |
設計者 | KAJIMA DESIGN |
施工者 | 鹿島建設㈱ |
写真撮影 | ㈱エスエス東京 |
【選評】
メディカルモール・ビル診療所・高機能クリニックなどの登場は米国の例を持ち出すまでもなく,わが国でも珍しくなくなった.しかし,本作品は大学病院との連携のもとで,本格的な専門クリニックとして運用され始めたという新規性だけでなく,駅周辺における町の新しいコア施設としての役割を担い,それに充分に応えられる建築が生み出されていることが評価された.まちづくりにおける医療機関が期待される役割を,明確に示したモデルと言えよう.また,複数診療科が同居する病院では得にくい患者アメニティを確保し,より緊密な医療提供が行えるクリニックは,専門医にとっても意味のあるものである.
自然林を背景に湾曲した美しいファサードを持つ外観は,上品な印象を与える.患者・職員動線の明確な分離,患者スペースに取り入れられた自然光と眺望,ちりばめられている多くのアートが患者の心を和ませる.男女別に設けたラウンジなどもこれからの方向性を示していよう.
クリニックのコアとなる診療は化学療法と診断・フォローアップケアであるが,それらに使われるゆったりとしたスペース,適度なプライバシー確保と看護観察のしやすさが両立し,巧みな設計力がうかがえる.
施設内には,他に小児・整形・メンタル・歯科・内科のクリニックが併設されているが,これらの機関にも利用提供される画像診断機能や乳がん検診という専門性は本施設の看板であり,現在のところあまり考慮されていない学生教育への貢献などについても工夫次第では今後の医療ビジネスのモデルになりうることを予感させる施設である.