2012年医療福祉建築賞≪準賞≫
もやいの家 瑞穂
所在地 | 岐阜県瑞穂市本田字丸竹2050-1 |
定員 | グループホーム18床 デイサービス12名 |
延床面積 | 922 ㎡ |
竣工年月 | 2011年3月 |
開設者 | 社会福祉法人 新生会 |
管理者 | 社会福祉法人 新生会 |
設計者 | 大建met |
施工者 | ㈱土屋R&C |
【選評】
長年新しいケアに挑んできた社会福祉法人と設計者が,1年半のワークショップを経て計画した小規模な施設である.
1階に認知症デイサービス,地域交流スペース,2階にグループホームという空間構成であるが,最大の特徴は2階のグループホームにある.正方形プランの外周に個室を 配した空間構成は,中央のホール部分が単調になりがちだが,高さ1,800の低い垂れ壁によって空間を分節化し,住宅らしいスケール感と多様な居場所を実現している.一部に設けられた高い天井と採光の効果もあり,平面図や断面図からは想像できない,ちょうど続き間の和室から坪庭を眺めるようなヒューマンで落ち着きある空間を実現している.バリアフリーが必須で床のレベルに変化をつけにくいが,模型によるスタディを重ね,天井面の操作により,住宅らしいスケールと多様な居場所を実現させた点は福祉施設の計画に一石を投じるものと高く評価された.1階も地域に開かれ拠点となっていた.また,机や仕切り棚になる家具ユニットの提案など,コストを抑えつつ豊かな空間を実現する工夫が随所にみられる密度の高い設計は秀逸である.
一方,将来の財源と介護人材不足に備え,グループホーム2ユニット(9人×2)を仕切りのない一体の空間とした計画は,一人ひとりに応じた多様な居場所を実現した反面,18 人という生活単位のケアの是非については今後の検証が必要である.現時点では高齢者グループホームの一般解としての評価が難しいが,従来の福祉施設にない新しい空間を提示した点を高く評価し,準賞を贈呈することとした.