2014年医療福祉建築賞≪準賞≫

中東遠総合医療センター

中東遠総合医療センター

所在地 静岡県掛川市菖蒲ヶ池1-1
病床数 500床
延床面積 46,151 ㎡
竣工年月 2013年3月
開設者 掛川市・袋井市病院企業団
管理者 掛川市・袋井市病院企業団
設計者 ㈱久米設計
施工者 大林・戸塚・丸明特定建設工事共同企業体
【選評】

 建物の老朽化と医師不足を背景に,隣接する二つの市立病院を統合し,再スタートをきった500床の病院であり,静岡県中東遠地域の急性期医療の基幹を担う.
 ゴルフ場跡地の高台という素晴らしいロケーションからは,眼下に市街地を見渡すことができる.敷地高低差を活かし,1階に患者出入り口,2階にサービス出入り口を設定している.病院玄関を抜けると,右手には外来診察室群が分節雁行型で,左手には中央診療部がL字集約型で配置され,その間を45度に振れたホスピタルモールが貫く.これによって生じた,たまりを待合スペースとして計画するとともに,分節雁行の間から自然光が射し込み,心地よい空間が実現されている.病棟は1フロア2病棟のコンパクトな三角形の平面を採用し,中央にスタッフステーションを配置することで動線の短縮と各病室への採光に配慮している.病棟はコンパクトな設計が故にスタッフステーション廻りに十分な広さを確保できていないため,重症患者が多い個室へのアプローチに難がある点が惜しまれる.
 災害時における事業継続計画(BCP) にも熱心で,患者の安全な生活環境を24時間確保するLCP(生活継続計画)を含め,きめ細やかな対応がなされている.高機能医療の提供,財務体質の改善,離職率の低下など統合の効果は見えつつあるが,組織風土の違いを乗り越え,公立病院改革のモデルとして価値を発揮し続けることを期待したい.