2014年医療福祉建築賞
至誠大地の家
所在地 | 東京都立川市錦町6-26-17 |
定員 | 30名 |
延床面積 | 1,609 ㎡ |
竣工年月 | 2009年8月 |
開設者 | 社会福祉法人 至誠学舎立川 |
管理者 | 社会福祉法人 至誠学舎立川 |
設計者 | ㈱竹中工務店 東京一級建築士事務所 |
施工者 | ㈱ナカノフドー建設 |
【選評】
乳児から幼児,児童という低年齢児を切れ目なくささえることを目指した新たな児童養護施設である.子どもたちの多くが虐待を受けての保護である.彼らの傷ついた心をケアする場のありようについて,建築主と設計者で共にプログラムを構築し,導き出されたコンセプト,「まもる」「ささえる」「つなげる」を建築に反映させた.
低年齢児であることを考慮し,居住棟は敷地内側の落ち着いたエリアに計画された.大きな窓,青空と眩しく暖かい光が差し込むテラス.ふとんや洗濯物が気持ち良く干されている.洗濯物をたたむ職員にもたれながら友達のことを話し,居室の扉を開けっ放しにして眠りにつく子どもたち.「大人は怖い」とおびえていたとは思えぬ無邪気な笑顔が,そこにはあふれていた.子どもの目線に合わせた様々な工夫が,伸びやかな活動を導き出している.各ユニットの担当職員が孤立しないよう,共有スペースを設けるなど職員への細やかな配慮もみられた.
研修棟は公道に面して計画された.職員達のささえ合い,学び合いの場として重要な機能を果たしている.低年齢児およびその親たちをささえるのは容易なことではない.
地域住民との交流の接点となる地域交流棟には,洗練された設えが意図的に施されていた.ここで開催されるイベントに関与する親たちにとって,自慢の建築であることは自信につながる一歩のようであった.
傷ついた子どもだけでなく,子どもにとって大切な家族も含めてささえ続けたい,その思いが強く伝わる施設であり空間であった.