2014年医療福祉建築賞
コレクティブハウス アクラスタウン
所在地 | 福岡県太宰府市五条2-18-16 |
定員 | 50名 |
延床面積 | 1,341 ㎡ |
竣工年月 | 2011年11月 |
開設者 | ㈱誠心 |
管理者 | ㈱誠心 |
設計者 | 大井幸次・町田寛之+大久手計画工房計 |
施工者 | ㈱北洋建設 |
【選評】
介護保険だけに頼らない独自の包括的なケアサービスを提供する有料老人ホームである.「人間性の回復」を理念に,要支援者から人工呼吸器等医療的なケアを必要とする重度者までを幅広く受け入れ,見守りから看取りまでを一貫して行う,国内では稀有な取り組みであろう.
建物は福岡県の太宰府天満宮から程近い住宅地にある.小ぶりな川を背に,間口17m奥行き50mの細長い敷地が南北両側で接道している.
地域の方々が気軽に訪れ,入居者と自然に交われるような場を造りたいとの思いから,プログラムは構築された.敷地内を貫通する小道は,カフェ・レストラン・ギャラリーなどにつながり,街の路地空間として機能している.居住部門は小道に対して開かれ,路地空間からお年寄りの暮らしが感じられる巧みな空間構成となっている.木造の居住棟,RCの居住棟,レストラン棟を分棟配置し,これらを路地空間やデッキテラスでつなぎ,住まいとしてのスケール感と落ち着いた佇まいを醸し出している.
無垢の木材をふんだんに取り入れ,内部には手摺は殆どなく,家具や壁の設えによって手掛かりとなるものが用意されている.上階に行くほど居室の独立性は高く,重症度が増すにつれ下階に移動できるよう計画されている.1階は建具の工夫により,居室部分と共用部分の境界が柔軟に運用できる造りとなっていた.どの階に住む居住者にも笑顔があふれ,大きな家族のような雰囲気に満ちている.
「自宅でない在宅」のありようを,具体的なかたちとして提示した優れたモデルである.