2019年医療福祉建築賞
石巻赤十字病院
所在地 | 宮城県石巻市蛇田字西道下71 |
延床面積 | 53,827 ㎡(すべての棟を含む) |
竣工年月 | 2015年3月(災害医療研修センター) 2015年7月(北棟)、2016年8月(本棟改修) |
開設者 | 石巻赤十字病院 |
管理者 | 石巻赤十字病院 |
設計者 | ㈱日建設計 |
施工者 | 鹿島建設㈱東北支店 |
写真撮影 | オノスタジオ・小野泰史 |
【選評】
病院の増築・改修工事は診療の継続性や感染防止などの優先的条件が多々ある.このような制約下では動線の長さや部門間の近接性などの建築計画上の課題を完全に解決で きることは稀である.当院は「救急・重症・災害医療機能 の拡充を図る」という最大かつ最終の目標達成のため,医療者と設計者が検討と議論を重ねて相反する課題に優先順位をつけながら計画された.施工段階でも医療者と施工者 の相互理解のもと最適解への努力がなされた.開院後は医療者の十分な理解のもとに運用上の工夫がなされ,地域医療の最後の砦を実現している.非常電源や予備水源の拡充,熱源の多重化など収入増には直結しない安心・安全のため の積極的な投資や,地域住民も参加する大規模災害時の訓練など震災の記憶を風化させない貴重な貢献をしている.また医療者や利用者の理解と協力なしには実施できない全館停電を伴う訓練を震災前から継続している.「大震災の経験者は現職員の半数にまで減少している.当時の記憶と貴重な教訓を次世代に引き継ぎ地域に広める」というリーダーの熱意のもと,建築(ハード)と理解・納得の上の運用(ソフト)の見事なバランスを実現している.