2021年医療福祉建築賞
幼・老・食の堂
所在地 | 東京都品川区西大井2-4-14 |
延床面積 | 354 ㎡ |
竣工年月 | 2017年12月 |
開設者 | ㈱ケアメイト |
管理者 | ㈱ケアメイト |
設計者 | teco |
施工者 | ㈱辰 |
写真撮影 | 太田拓実 |
【選評】
都市部の密集市街地に建つ保育と高齢者介護を担う小規模複合施設で,その外観は住宅街に溶け込む.必ずしも採算性が高くない小規模だが複雑な施設を実現した事業者の地域福祉への真摯な取り組みに感銘を受けた.
設計者は事業者の思いを正面から受け止め,2つの施設機能を複合する難しいプログラムを丁寧に読み込んで建築を実現した.「玄関」のような結界を設けず,開放的に出迎えてくれる土間のような入り口が特徴の1つである.2つめの特徴は,土間に接し,建物の臍の位置に開放的なキッチンを置いていることである.食事の準備に加えて,老人や子どもを見守り,気配を感じ,あるときは声がけし,人の出入りにも目が届く.料理の湯気や匂いとともに温かい眼差しも感じさせる空間構成である.
小さな建物のなかで老人と子どもの二世代の世話をするという複合プログラムを受けて,両世代のゆるやかな交流を目指して一階と二階に吹き抜けを介して分散配置している点が第3の特徴である.
建築関連の法規の規定もあろうが,窮屈さとぎこちなさも見られなくはない.しかし世代間の断絶,非寛容に向かう日本社会において,自然な世代間交流を呼び戻す一つの試みであり,可能性であろう.この困難な課題に敢然と取り組んだ設計者に清々しさを感じた.