このガイドラインに関する「よくある質問」(FAQ)を次にまとめます。実施する際の参考にして下さい。
◆プロポーザル全般について◆
Q: | このガイドラインの詳細を記した冊子のようなものはありますか。 |
A: | そういったものはありません。 このガイドラインには、プロポーザルを実施するにあたっての基本的な考え方はすべて盛りこんであります。その精神を十分に汲んだ上で、個々の事情に合わせたプロポーザルを実施して頂ければ結構です。 |
Q: | 設計者の選定には、どんな方法がありますか。それぞれの長所、短所についても教えてください。 |
A: | 設計者を選ぶには、一般に次の4つの方法があります。 1)特命方式:施主が自力で、もしくは信頼する第三者の紹介を経て、これぞと思う建築家(設計事務所)に直接依頼する方式です。可能であれば、これは施主にとっても設計者にとっても明快で、最も自然な選定方法です。 2)設計競技(コンペ)方式:与条件を整理した上で、公募または指名によって複数の設計案を求め、最も優れた設計案の提出者に設計を依頼する方式です。実行にはそれなりのエネルギーを必要としますが、手をかけるだけの成果は得られます。広く設計案を募りたい場合には、この方式がよいでしょう。 3)プロポーザル方式:公募または複数者の指名によって、応募者に過去の設計実績等の資料に加えて若干の技術提案の提示を求め、これらを総合して設計者を選ぶ方式です。 4)入札方式:物品の調達先や施工業者を決めるのと同様に、設計料を入札で競わせて設計者を決める方式です。入札は、誰が行っても結果の同一性が保証される場合には有効ですが、建築設計は内容や質があらかじめ特定できず、設計者の見識や力量、設計に投じる時間などによって大きく左右されるものです。したがって、品質を保ちうる設計条件が綿密に作成できるといった特殊なケースを除けば、不適当な方法といえます。 |
Q: | プロポーザル方式とコンペ方式の違いが、今ひとつよく分からないのですが。 |
A: | 両者の一番大きな違いは、コンペ方式が「設計案を選ぶ」のに対して、プロポーザル方式は「設計者を選ぶ」という点です。つまりコンペでは「どの案が一番よいか」が競われ、プロポーザルでは「どの設計者が適当か」が問われます。 |
Q: | 「設計案を選ぶ」のと「設計者を選ぶ」のとは、具体的にどう違うのでしょうか。 |
A: | コンペ方式は「設計案の選定」が目的ですから、案の優劣を判断するのに必要な配置図・平面図・立面図・断面図・鳥瞰図・内観図などの提出を求めることになります。また、原則として当選案が実施設計を経て、そのまま実現されることになります。 一方、プロポーザル方式では、「設計者の選定」を目的に(設計者の考え方や力量を知るために)「技術提案」を求めるわけですから、案自体には拘束されない(変更もありうる)ことになります。したがって「案」の表現も構想図程度の精度にとどめ、代わってヒアリングを通して設計者の考え方や人物・設計体制などを確かめた上で総合判断することになります。 |
Q: | このガイドラインは、公共建築協会が出している「プロポーザル方式」と、どう違うのですか。 |
A: | 主な違いは、次の3点に集約されます。 1)原則的に公募方式を推奨していること 2)まず技術提案の優劣によってしぼり込みを行った後、過去の実績等は第二次審査段階での参考資料とするにとどめていること 3)技術提案における表現の自由(一定の図面的表現)を認めていること |
Q: | 指名の場合は何者に依頼するのが適当でしょうか。また、なぜ指名より公募が推奨されるのですか。 |
A: | 指名される設計組織は、通常の場合、事前の調査などを通して安心できるところが選ばれるわけですから、数者もあれば十分でしょう。いたずらに指名者をふやしてみても、多忙で力をさく余裕がない設計組織の場合は、おつきあい程度の対応になることもあります。また、指名の集中する一部の組織を疲弊させる結果をも招き、好ましくありません。 広く叡知を集めたいのであれば、課題に対して意欲をもって取り組みたいと考える設計組織に対して広く門戸を開く公募方式とすればよいでしょう。その場合、過去の実績が十分でない者も応募してくるでしょうが、熱心で優秀な設計者であれば、特定ジャンルに対する経験の有無を超えて新鮮な仕事をする場合も多いものです。 |
Q: | 医療施設、福祉施設の設計にふさわしい設計事務所を推薦してもらえますか。 |
A: | 当協会のホームページに「法人会員紹介」のページがあり、法人会員のリストが掲載されています。HPのある会員へはリンクが張られていますので、ご覧になって気に入ったところへ直接コンタクトして下さい。 また、「医療福祉建築賞」のページには、これまでの受賞作品が掲載されていますので、参考にして下さい。 なお、協会として、特定の会員を推薦することはできません。 |
◆「ガイドライン」について◆
[1.前文] |
Q: | 「選考の過程などに不透明なケースが多い」とありますが、具体的にどういったケースが「不透明な」印象を与えるのでしょうか。 |
A: | 「誰が、いつ、どこで、どうやって決めたか」が明らかでなければ「不透明な」印象を与えます。 特に審査委員が公表されないもの。誰が決めたかも分からないのでは、まともなプロポーザルと考える人はいないでしょう。 次に、審査経過が公表されないもの。どうやって決めたかを公表できないようでは、いわゆる「出来レース」だったのではないかと疑われても仕方がありません。 |
[2.方式ならびに応募資格者] |
Q: | 「公募方式」とありますが、広く参加者をつのるには、どのような方法がありますか。 |
A: | 建設専門の全国紙に依頼すれば、おおむね掲載してくれます。 当協会へご連絡頂ければ、会員へ情報を流すこともできます。 |
Q: | 「施設の規模や性格によって応募者について若干の条件をつけることも可」とありますが、たとえば500床規模の精神病院の場合を例にとると、どういう条件が考えられますか。 |
A: | 例えば「精神疾患関連施設について何らかの形で研究・計画・設計に携わった経験があること」とか「それを満たさない場合には条件を満たす個人や設計組織等と協力関係を結ぶこと」とかいう条件をつけることも考えられます。 |
[3.応募要項の作成と公示] |
Q: | このプロポーザル方式で設計者を決定するのに、どのくらいの時間が必要ですか。審査委員会の立ち上げから、設計者選定までの標準的なスケジュールを教えて下さい。 |
A: | 最低3ヵ月程度は必要です。このほか、ヒアリングや、決済などに時間がかかる場合もあります。 参考のために、シンプルなプロポーザルを想定して、スケジュール例をあげてみましょう。日付はあくまで仮のもので、最もスムーズに行われる場合を想定しています。 ・企画準備会:3月15日 設計与条件の整理、技術提案の課題設定、募集要綱案の作成、審査委員の選定 (このときまでに審査委員長が決定していて、上記の点について委員長を中心にした検討が進んでいることが望ましい) ・第1回審査委員会:4月1日 募集要綱案、審査方法、スケジュール等の審議、ならびに現地視察 ・募集公告:4月5日 募集要綱の公表 ・応募登録:4月15日~22日 参加希望者の登録受付 ・提出書類の受付:5月1日~15日 技術提案書はじめ提出書類の受付 ・提出書類のチェック:5月16日~22日 提出書類の事務的なチェック ・第2回審査委員会:6月1日 一次審査による絞り込み ・第3回審査委員会:6月8日 ヒアリング、二次審査 ・審査結果の公表:6月15日 |
Q: | プロポーザルの要項の作り方がよくわかりません。要項の作成を貴協会にお願いできるのでしょうか。 |
A: | 必要であれば、お話合いの上、お手伝いすることはあり得ます。 |
[4.技術提案の課題と提出形態等] |
Q: | 「施設の全体計画」とは、各階平面図や外観をイメージできるもののことでしょうか。 |
A: | 施設の性格や規模によって一概にはいえませんが、敷地に対する配置計画図、主要階の簡単な平面図、外観イメージ図などが含まれるでしょう。 |
Q: | 「必要に応じて若干のテーマを加える」とありますが、具体的にどういう例が考えられますか。 |
A: | 最近は以下のような課題が多いようですが、当該施設にとって最も関心のある固有のテーマを厳選して課せばよいと思います。 「患者中心の施設のあり方」「療養環境の向上と効率性の両立」「病室(居室)についての考え方」「待合スペースの配置」「情報システムについて」「省エネルギー計画の方法について」「LCCと省エネ」「医療経営に対しての建築的配慮について」「気候風土に対しての配慮ついて」「将来的な変化への対応」 |
[6.審査委員会] |
Q: | 「外部の専門家」とありますが、内部の関係者だけで委員会を構成すると、不都合な点があるのでしょうか。 |
A: | 内部の関係者には通常上下関係があるほか、各方面の利害関係者とのつき合いなどに左右されることも多く、判断に公正を欠くおそれが大きいという問題があります。 そのようなケースの場合、設計者は応募を躊躇しがちです。結果として全力投球によ る提案を得難い可能性もあります。 また、外部の専門家を招くことで、病院計画に関して専門的見地からの将来的展望をもった客観的な意見が期待できます。内部の関係者だけでは得られない貴重な意見といえます。 |
Q: | 「管理・運営系と建築系」の構成比はどの程度が適当でしょうか。 |
A: | 1対1、または建築系が若干多いくらいが適当でしょう。 また、最終段階での「多数決による2者からの選定」というケースを想定すると、審査委員数は奇数の方が望ましいといえましょう。 |
Q: | 「委員長:見識豊かな外部の建築専門家」は、どのようにすれば見つけられますか?ご推薦いただけますか。 |
A: | 当協会で推薦することも可能です。 |
Q: | 民業の「建築家」を委員長としても差し支えないものでしょうか。 |
A: | 委員長・委員ともに民業の建築家を起用しても差し支えありません。ただし、この場合、当該委員の所属する組織が応募できないことは言うまでもありません。 |
[7.審査] |
Q: | 「数者までの絞り込み」とは、具体的にどのような方法で行うのでしょうか。 「第二段階」に関しても同様です。 |
A: | 一次審査では、提出された技術提案書(各1枚)を壁面または机上に並べ、各委員が個人の責任において各提案に対する優劣の判断を下し、それを投票方式等によって持ち寄り集計し、高い評価を得る数者を選びます。このとき順位をつけておくことが望ましいでしょう。なおこの間、必要に応じて討議を挟み、各提案の特質について理解を深めた上で判断することが大切です。 第二次審査では、ヒアリングと質疑応答を十分に行った後、第一次審査での順位にも留意しつつ、話し合いまたは投票によって、最も適当と思われる設計者を選びます。 |
Q: | 審査委員会が選定した「最も適当と考えられる設計者」と必ず契約しなければならないでしょうか。 |
A: | 原則的にはその通りですが、契約条件等が折り合わない場合には第二候補と交渉することもあり得るでしょう。いずれにしても、審査委員会の選定結果が理由もなく尊重されず、異なる候補者と契約に及ぶケースについては「不透明」のそしりは免れません。 |
[8.公開] |
Q: | 事前の不穏当な動きを回避するために「募集時の審査委員名の公表」は避け、結果の公表時に発表する方がよいとも考えられます。なぜ「事前に審査委員を公表」するのでしょうか。 |
A: | 審査委員はその経歴や立場等によって、施設に対する見方に相異があります。各審査委員は自分の価値感に従って判断を下すわけですが、応募者から見れば、どのようなメンバーが審査するのかを知ることは、提案の作成方針を立てる上でも重要な手がかりの一つとなります。信頼できる審査委員だと思えれば全力投球で応募できますし、その反対なら応募をさし控えることも考えられます。審査委員の事前公開は、応募者にとって重要な与条件と考えて下さい。見識のある審査委員であれば、万一事前運動などがあれば、当該応募者を失格にすることこそあれ、有利なはからいをすることなどあり得ません。 |
Q: | 「アイディアの無神経な盗用」とは、具体的にどんな事例が考えられますか。骨格は別としても、部分的なアイディアは、発注者として取り入れたくなると思いますが。 |
A: | 他人のアイディアでも、それが良い場合には、自分なりにこなして発展させる形で取り入れるのであれば許容範囲ともいえましょうが、安易な「そっくりコピー」に問題があることは常識かと思われます。 |
Q: | 「著作権」の面から、提案書に盛られたアイディアの扱いに関する標準的な考え方を教えて下さい。 |
A: | 「著作権は応募者に帰属する。ただし、主催者がプロポーザルの趣旨に則して公開する場合は、応募者はこれを認めるものとする」と募集要項に記載するのが一般的です。 |
[9.参加報酬等] |
Q: | プロポーザル参加者に報酬は必要ですか。 |
A: | 公募の場合は、参加する・しないは自由ですから応募者全員への報酬は不要ですが、第二次選考に残った数者に対しては、優れたアイディアの提供に対する報酬として、できれば若干の額を準備すべきでしょう。 |
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◆医療・福祉施設の設計プロポーザル・ガイドライン 適合度チェックリスト◆
あなたの考えられているプロポーザルが「医療・福祉施設の設計プロポーザル・ガイドライン」の骨子に適合しているかどうかを以下の8項目によってチェックしてみて下さい。
- 募集の時点において審査委員名を公表していますか。
- 外部の専門家が審査委員の多数を占めていますか。
- 見識豊かな外部の建築専門家を審査委員長としていますか。
- 提案に図面を含む自由な表現を認めていますか。
- 過去の実績よりも技術提案の優劣を重視していますか。
- 審査経過および結果を公表していますか。
- 公募方式をとっていますか。
- 指名方式の場合は指名者に、公募方式の場合には優秀提案の提案者に、参加報酬を準備していますか。